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「最強のふたり (原題:Intouchables 英題:Untouchable)」 レビュー

それは、“社会ののけ者たち”にして、“最強のふたり”の物語。

ひょんなことから、富豪である身障者の世話係になってしまった、スラム育ちの黒人青年。 価値観をはじめ何もかも違う二人は交わることはないが、お互いにありのままを受け入れ、絆を育んでゆく。

やたらと安っぽい感動的なキャッチフレーズ(奇跡とか)が目につくものの、そんなものはどうでもいいくらい、温かで静かで素敵な映画です。 派手さもお涙頂戴もなく、淡々と進んでいくけれど、確かに感動がある。 それがいい。

 icon-smile-o ここがイイ!

  • 完璧な配役。 メインの二人の役作りと演技は完璧といった所で、本当に自然に演じています。 おかげで感情移入も容易です。
  • 安直なお涙頂戴ではなく、あえて淡々と、小さな出来事を積み重ねていくことで、静かに感動の波がやってきます。
  • 音楽のチョイス・使い方も効果的。

 icon-meh-o 微妙・惜しい

  • とくになし。

 icon-frown-o ここがダメ!

  • とくになし。
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とにかく“ふたり”の関係が最高だ!

物語をつづる二人は、生まれも性質も何もかもが違います。 かたや芸術やクラシックを好むほぼ全身不随の白人富豪、かたやノリのいいポップスやキレイな女の子に目がないスラム育ちの黒人青年。

その二人が、たまたま就職面接で出会ったことで、物語がはじまるのです。

そもそも、黒人青年(ドリス)は介護人を求める富豪(フィリップ)の元へ訪れたのは失業保険のため。 就職する気はないので「さっさと不採用にしてくれ」とまでいう始末です。

そんなドリスに何かを感じ取ったフィリップは、不採用にするどころか採用するんです。 そうして不慣れながらもドリスはフィリップの世話をすることになっていくのですが、その過程でふれあいを通じ、互いにかけがえのない存在になっていくのです。

文字にすると陳腐で(物語としては)ありがちなんですが、この描き方が非常に秀逸! なんといっても二人は表情豊かにして、非情に自然な演技をしています。 身障者という難役も、それをささえる介護人という役も見事にこなしています。

ドライブ、演劇、パラグライダー。 色んなシーンがありますが、どれも輝いていて印象的です。 特にパラグライダーのシーンは、もう本当に心の底から楽しんでいるとしか思えない表情を見せてくれます。 そんな二人の表情には、頬を緩ませざるを得ないじゃないですか!

また、二人のような正反対の人間がどうして絆で結ばれていくかといえば、「ありのままを受け入れる」からなんですね。

ドリスはフィリップを身障者として扱うものの、それは哀れみや気遣いではないのです。 フィリップがそういう人だから、そうするのです。 身障者だと下に見るでもなく、また、声高に差別反対を叫ぶわけでもなく、なによりもフィリップがそうであるから、そうするのです。

フィリップもドリスの育ちが悪いこと、粗野であること、いわゆる無学・無教養であることは知っています。 しかしだからといって遠ざけたり、顎で使うことはしません。 彼に信頼を置き、心身ともに支えとして任せるのです。 それは、ドリスがフィリップをそのまま真正面から受け止めたからです。

身障者とその介護人ではなく、あくまでも、フィリップとドリスというふたりの物語なのです。

うまくニュアンスが伝わっているかはわかりませんが、互いにあけすけなく言い合うさまは、非情に素晴らしい関係と言えます。 フィリップの寛容さもさることながら、いい意味で容赦・遠慮の無いドリスだからこそ、本音で付き合える無二の友になれたのでしょう。

静かに、淡々と

その二人が繰り広げる物語は、ピアノを基調とした静かなクラシックと、対極にあるようなポップスを要所に挟みつつ進行します。

これがそれぞれのシーンにとてもよくマッチし、すんなりと没入していける仕掛けになっていますね。

物語も、予想外のハプニングだとか落涙必至の奇跡などはありません。 それこそ、私たちの身近にもありそうなエピソードを交えつつ、静かに、淡々と描かれていきます。

これが、物語の最初から最後までずっと続き、積み重なってゆくことで、温かな気持ちにさせる“感動”が徐々に大きく、全身に染み渡っていくのです。

ただひたすらに胸打たれたり、号泣できる物語を見たい!とか、そういうのを求めた場合は本作はそれに応えてくれることはないでしょう。

しかし、それは感動が小さいことを意味しません。 確実に存在し、より優しく、暖かに、私たちの心を包んでくれるのが、本作における感動です。

是非、しっとりとした空気と感動をご堪能下さい。

総括

なんというか、ここまでレビュー書いておいてなんですが、全く本作の良さを伝えられていない気がします。

百聞は一見にしかず、と文章を書きながら言ってしまうのはズルいというか本末転倒な気がしますが、本作からもらえる気持ちは、なかなか言葉で厳密に伝えることができません。

ただ泣ける(泣きたい)というのが感動の唯一の形ではなく、本作のようなものも素晴らしい感動の形でありますし、後に長く残るのは間違いなく本作のほうでしょう。

正直、タイトルとかキャッチからは「安っぽい」「ありきたり」な感じがして、なかなか見ようと思えなかったんです。

が。

パッケージに映る二人の表情。 これが心を掴んで離さず、悩みに悩んだ挙句借りてみましたが……直感を信じてよかったと思います。 あそこで手に取らなかったら、私は大いなる機会の損失を被っていたことでしょう。

なお、原題のUntouchableは「触れることが出来ない」という意味の他に、「社会ののけ者」という意味もあり、そして、「無敵、無比」という意味もあります。 タイトルに込められた意味も深く味わい深い、そんな作品です。

是非、一人静かに味わうのをおすすめします。

映画『最強のふたり』公式サイト

書いた人はこんな人

壬生狼
壬生狼(みぶろ)と申します。 miburo666/ルプス(Lupus)は概ね同一人物。 ゲーム、音楽、映画/アニメ、イラストなどが趣味。 ここでは音楽や映画/アニメを中心に、趣味関連の記事を書いていきます。
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