「戦火の馬 (原題:War Horse)」 レビュー

戦火の馬 ブルーレイ(2枚組) [Blu-ray]

その馬・ジョーイは様々な人々の想いを乗せて、走る。

時は第一次世界大戦。戦火の及ばぬ農村部で、少年は一頭の馬と出会う。運命的な出会いを通じ心を通わせる一人と一頭であったが、ドイツとの開戦をきっかけにジョーイは戦馬として徴用されてしまう……。

本作はジョーイに触れる様々な国の人々の想いを描く戦争映画です。視聴者はジョーイを通じてその時を生きた色々な人々の心へと触れ、切なくも温かな気持ちにされることでしょう。

表面的に革新的なものはありませんが、高度な演出などが決して本作を陳腐なものにせず、通して飽きさせずに惹きつけてくれます。

 icon-smile-o ここがイイ!

  • なんといってもジョーイ役の馬が秀逸!およそ表情の見えることのない馬であるにもかかわらず、時に動きで、時に見つめる眼差しで感情を表しているが如き名演が光る。演出による所も多いものの、この馬なくして成功はなかったろう。
  • 程よく記号化された登場人物たち。キャラ自体の深みはそれほどではないものの、描かれ方はどの人物も特徴的でありシンボル的。
  • 物語の展開は予想の域を出ず、ご都合主義的・非現実的な点もある。しかし、それを意識させない・気にならないものにしている物語描写が流石といったところ。
  • 陽光・暁光を使ったシーンカットが美しい。

 icon-meh-o 微妙・惜しい

  • 「プライベート・ライアンにはしない」という言葉通り戦争映画でありながら、そういった無残なシーンなどはほとんど皆無。根幹のテーマがその時代を生きた人々それぞれの勇気・誇りであるため問題ないとも言えるが……。
  • 安心して観られる映画であることには間違いはない。が、反面、手堅過ぎて保守的に映らないこともない。

 icon-frown-o ここがダメ!

  • 特に無し。
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詳細

本作は物語の流れでジョーイが各地を転々としていきますが、そこで触れ合う人々の人間模様を見せ、次の場所へ……という風に様々な人の想いを乗せて駆けてゆきます。視聴者はジョーイの目を通じて、第一次世界大戦で有ったかもしれない人々の生きざまを見ることになるのです。

ところがこのジョーイ、単なる狂言回しに留まりません。そりゃもうかなりの役者ぶり!!

最近ではCG技術の発達によりどこがCGなのか区別がつきにくくなり、本作でも境界線がわかりませんでしたが、人と関わるシーンや他の馬と触れ合うシーンでの彼の挙動や視線には注目。

動物を好きならばなお感じるかと思いますが、言葉がなくともしっかりと「キモチ」が伝わってくるのです。

元来馬は、犬猫のようには表情豊かではなくどちらかと言えば何を考えているかわからない部類かと思います。しかし本作を見ると、そこには確かに心が存在するのだと思わざるをえません。

また登場人物はずっと出ずっぱりというキャラはいないものの、各人ともそれぞれの勇気・誇りを持って生きているのだという描写がされています。それらを前述のジョーイによって人の数だけ勇気・誇りの数があるのだと、本作を通して描いているのです。
※敵を討ち倒して救国することだけが勇気でも誇りでもないのです。

余談ながら少年一家が飼っているアヒル(ガチョウ?)が出番は少ないもののいいキャラしてます。本作で数少ないユーモア担当なので、この子にも注目してあげて下さい。

他の戦争映画と同じノリで、本作を見ると評価は下がるかも

本作のテーマは再三になりますが生き様、勇気・誇りとは何か。そういったものなのだと思われます。

戦争映画で重要な命の尊厳だとか絆も本作では勿論触れているのですが、それよりも前述のテーマの方に大きな比重があるように感じました。

となるとプライベート・ライアンで挑んだ凄惨な戦場の様子は、本作の持つ空気感に照らしてみるといささかエグ過ぎたのかもしれません。というのも本作ではあまり無惨なシーンは出てこないんですね。綺麗な戦場、とまでは言いませんがそれほどヘヴィな映像ではない。

世間一般にはヒットしたらしい「ハート・ロッカー」のように、紛争地域に長くいることによる「狂気」を描くはずだったにもかかわらず、妙なところで描写を甘く・オブラートに包んだ表現にしてしまったために、テーマの割には対してメッセージ性のない綺麗な戦場になっていたら困ったものですが。

当然本作はそんなこともなく、メッセージ性は強く押し出していないものの、一つの作品としてのコンセプトは全うできているし感動もできます。しかしここが「甘さ」と受け取る人もいるはずなので、やや評価が分かれそうな点ではあります。

総括

全体的に見てスピルバーグらしい優等生(無難)な作品になっているかと思います。

ただ、奇をてらった作品がもてはやされる昨今では古風な本作は地味に映るかもしれません。しかし本作はそんな奇をてらわずとも面白い映画は作れるという何よりの証拠であります。

暴力表現の少なさから観客層は幅広くとってあるかと思われ、テーマの割にはそれほど小難しくもなく人は選ばないかと。

だからといってカップルで手を繋いで観るというのも違うと思いますが(笑)、しっとりじっくりと鑑賞できる環境でご覧になることをおすすめします。

人間模様も見ものですが、馬のアイデンティティを発揮し戦場を傷つきながらも疾駆する様は圧巻ですよ。 あと、アヒルだかガチョウだかと、フランス人少女が可愛いっす!(どうでもいい)

書いた人はこんな人

壬生狼
壬生狼(みぶろ)と申します。 miburo666/ルプス(Lupus)は概ね同一人物。 ゲーム、音楽、映画/アニメ、イラストなどが趣味。 ここでは音楽や映画/アニメを中心に、趣味関連の記事を書いていきます。
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