こちらで更新継続中。「プロメテウス (原題:Prometheus)」 レビュー

「プロメテウス (原題:Prometheus)」 レビュー

エイリアン(初代)のリドリー・スコット監督が送る、新たなSF映画の基軸。

2089年にある考古学者は壁画を発掘する。それには、世界各地の遺跡に描かれたものと共通するものがあった。人類のルーツを指し示す、星図である。

2093年、彼らは星図に指し示された惑星に降り立つ。そこには高度な文明を感じさせられる建造物があり、そこで驚くべき発見をするのだが……それは同時に、悲劇の始まりでもあった。

リドリー・スコットの健在っぷりを堪能できる逸品。エイリアン鑑賞済み(&ファンであること)前提な気がする作りや、ちょこちょこツッコミ待ちなシーンが気になるものの、全体的にはとてもよくできた昔懐かしい感じもする作品です。

ここがイイ!

  • 美しい景観、雰囲気たっぷりのロケーション、こだわりの音響効果。
  • エイリアンファンには嬉しい諸々の演出。
  • 全体に漂う、独特の情緒あふれる空気感。

微妙・惜しい

  • エイリアン未経験者、SF初心者などには不親切で、少々難易度が高め?
  • 昔ながらのSF映画を感じられる、妙なユーモアと甘さが評価を少し分けている。

ここがダメ!

  • 吹き替え派の人は、感動をそのまま享受できない。理由は後述。
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詳細

風の便りに聞いていた分には、本作は割合賛否ある内容ということだったので、過度の期待はせずに見てみたわけですが。

うーむ、やはり私は彼の描く宇宙が好きなようです!

触れ込みとしては「人類の起源に迫る!」とかいうものだったようですが、幸いそのあたりは気にもとめていなかった(むしろエイリアンとの関連で興味を持った)ので、キャッチと内容の差にとまどうことはありませんでした。

本作で描かれるのは、生命・神話(宗教)・性といったもので、リドリー・スコット的なにおいがそこかしこにある世界です。といってもそれらは露骨に提示されているのではなく、作品の根底に流れているという形で現れています。

それゆえ、上に書いたものを感じられなかったからといって楽しめないわけではありません。その場合は、人類の起源・存在の答えを求めてやってきた惑星で、異常事態に巻き込まれる物語として楽しむことができます。

再生するとはじめに目に飛び込んでくるのは、雄大で美しい大自然。ここで引きつけておいて、シーンの切り替わりの直前に重要な演出を持ってきています。このあたりを理解できるのは作品のクライマックス頃になりますが。

次いで惑星への旅の発端となる壁画発掘のシーンを経て、メインとなる宇宙・惑星のシーンとなりますが、ここで使われているBGMやSEも、とりわけ強烈な印象を与えるわけでもないのに秀逸な作りこみがされています。

そうして降り立った惑星では早々に知的生命体の存在とか、諸々がわかるのですが……それと歩調を合わせるように「不安感」も強くなっていきます。感覚的にヤバい、という感情を徐々に累積させられる、細かな演出の積み重ねは本当に秀逸です。

セリフまわしや、表情にもセンスを感じる部分が散見され、やはり撮り方がうまいなぁと感心・安心しつつ見ておりました。

単品でも楽しめますが、初代エイリアンを見ておくと、より楽しめるでしょう。

ツッコミどころも多いよ

SFにはユーモアもつきもの?なわけですが、意図してかせずしてか(たぶん意図してないだろう)ユーモアが感じられる部分がありました。

それは異変が起こり始めたあたりのヒロインの行動であったり、物語終盤での人物の行動であったり。

ユーモアというか、突っ込まざるをえない演出なわけですが……なまじリアルなだけにシュールに映るというかなんというか。昔ながらのSF映画を見ている身としては生暖かく許せたのですが、本作に真正面から向き合って挑んだお客さんにはウケが良くなかった模様。

っということで、シリアスに受け止め過ぎると「オイオイ」となる部分が多くあるかもしれません。

吹き替え派の人に悲しいお知らせ

本作は素晴らしい作品のひとつで間違いなく、今後の展望にも期待せざるをえない逸品なのですが……吹き替え派の皆様には大変悲しいお知らせがあります。

近年では不興行の回避策の客寄せとして、声優業に関し素人と言えるタレントや俳優なんかを、期待作のメインキャラの声に起用することが多いのですが。本作でもそれをやっちゃっています。

ヒロイン(エイリアンで言えばリプリーにあたる主役)に、剛力彩芽というタレントを起用しているのです!どうしてこうなった!!

彼女の技量は擁護が一切できないほど下手くそです。英語音声・日本語字幕で楽しんだ後に、ひどいと話題の吹き替えで見てみたのですがね……最初は「あーひどい棒読みだなぁ」と、少しニヤニヤする程度だったんですが、最初のヤマの部分でこらえきれず笑ってしまいました。

もちろん、全くもって、笑うシーンじゃありません。むしろシリアスで、ドキドキするシーンですらあったはずなんですが……全くヒロインのイメージとマッチしない上、棒読みでセリフを言うのが極上のギャグに見えて仕方がありませんでした。

本来であれば感動と余韻を多く残す本作の結末も、彼女のしょうもない演技では全て台無しになるのは必定。悲しいことに剛力版以外に日本語音声は含まれていないので、吹き替え派の人は彼女の声に耐えるか、字幕で我慢するか、見ないか、という気乗りのしない選択を迫られるわけです。

彼女の技量のなさもたいがいですが、諸悪の根源はこんなくだらないマーケッティングで素人を起用しちゃうような日本の配給会社です。同じような理由でアニメーション作品もぶち壊したりすることもありますんで、余計なことをして作品に泥を塗るくらいならなにもしないでほしいもんです。というか関わらないでください、マジで。

総括

万民におすすめできるか、といえば、本作はおすすめできないでしょう。

エイリアンファンですら「否」という人もいる本作ですから、非エイリアンファンとか、ましてやなんとなくタイトルを知ったようなSF初心者には色々な意味で難易度が高いです。

しかし、本作の持つ雰囲気は心をつかんで離しません。冷徹ですらあるはずの宇宙に、血肉が通っている印象を受けるのです。これはひとえに、練りこまれた設定と演出のおかげでしょう。

SFが好きだ、エイリアンのファンだ……というような人には、ひとまず見ておいて欲しい作品ではあります。その結果、本作に喜びを見出すか失望するかはわかりませんが、この世界観・空気感には触れてほしいものです。

ただし、英語音声・日本語字幕一択ですがね。

なお、次回作を作る前提での構成となっているため、この作品だけでスッキリと(ほぼ)完結しない点は注意です。

書いた人はこんな人

壬生狼
壬生狼(みぶろ)と申します。 miburo666/ルプス(Lupus)は概ね同一人物。 ゲーム、音楽、映画/アニメ、イラストなどが趣味。 ここでは音楽や映画/アニメを中心に、趣味関連の記事を書いていきます。
記載されている会社名・製品名・システム名などは、各社の商標、または登録商標です。
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