「ソードアート・オンライン ―ホロウフラグメント―」 レビュー

小説原作・人気アニメのゲーム化作品。 PSPで発売された「インフィニティ・モーメント」をブラッシュアップし、ホロウエリアとそれに関するキャラやイベントなどを追加したもの。

ハイクオリティなムービーシーンや、そこそこ見れるキャラ造作、アニメファンやMMORPGファンにはニヤリとできる演出などがある一方で、キャラゲーとしては遊べる部類なもののひとつの作品としての完成度はいま一歩。

ただ、惰性で続けてしまう不思議な魅力があるのも確かで、文句を言いながらでも、なんだかんだプレイ出来てしまいそうな作品です。

 icon-smile-o ここがイイ!

  • 非常に手軽。 テンポがいいとも言える。
  • アニメ版に準じたムービーシーンのクオリティは非常に高い。
  • ゲーム中のUIやSEなど、アニメ版そのままの雰囲気になっていて、再現度高め。
  • グラフィックはお世辞にもいいとはいえないものの、キャラ造作はローポリ的且つそれなりの再現度で魅力。
  • トレジャーハントの楽しみも薄味ながら存在。 ホロウエリアの冒険感・探索感は本編の物足りなさをカバーできている。

 icon-meh-o 微妙・惜しい

  • 設定上、キャラが高レベル帯で開始なため、よくあるRPGの序盤のようなさくさくレベルアップ感はない。 レベリングも敵やクエスト報酬を見てもマゾ寄り(MMORPGの雰囲気を再現はできている)。
  • 当然ながら最低限アニメ版を見ていないと入り込めないし、見ていたとしてもリーファやシノン参戦のくだりは無理・説得力に欠ける印象がある。 ただし、前作インフィニティ・モーメントは未プレイでも(良くも悪くも)問題なさ気。
  • キャラスキルやバトルの仕様など、自由度は高めなものの、説明不足。 ある程度MMORPGの知識を備えていないと慣れるまでに相当時間がかかりそう。

 icon-frown-o ここがダメ!

  • 全体的に大味で、粗い作り。 特に戦闘まわりで顕著。
  • AIがバカ過ぎる。
  • 本編ストーリー、キャラエピソードなどは薄味もしくは無難でありふれたもの多し。 そして、ハーレム展開多すぎで気持ち悪い。
  • 本編の展開に変化がなく、階層攻略のモチベーションが全く維持できない。
  • 武器強化の確率表示が、MMORPGらしく詐欺表示(60%くらいでもほとんど成功しない)。 こういうところまで再現しなくてもいい。
  • エリアチェンジしないとセーブできない/してくれない、中途半端でユーザビリティを考えていない謎オートセーブ。 任意セーブか完全オートセーブになぜしなかったのか。
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キャラゲーとして: 相当遊べる部類

こうしたアニメやらなんやら原作のゲームは、完成度が低い傾向にあるのが現状なんですけれども、本作に関してはゲームとしての一定のクオリティと、かなりやりこめるボリュームを備えていて、遊び込める部類になっていますね。

アニメーションのクオリティも秀逸。 アニメ版の雰囲気はそのままに、違和感無いようにトゥーンレンダリングで3D化。

RPGの基本は踏襲しつつ、SAOらしさの再現をし、独自性も持った戦闘。 多くのソードスキルとバトル・パッシヴスキルによる自由度の高いキャラ育成などなど。

ただ、原作などの設定により、ゲーム開始直後から100レベル近い状態で始まり、所持金とアイテム価格が超絶インフレしているなど、普通のRPGとは異なる部分もあり、このあたりがRPGにおけるゲームプレイの楽しさを削いでいる部分もあります。

レベルは高レベルスタートのため上がりにくく、ガシガシ戦ってガンガンレベルアップしてキャラ強化!というよりは、ある程度強いキリトさんがレベル・実力ともに弱いNPC(含ヒロイン)を連れ回してレベリング手伝いしてあげるという、初心者プレイヤーのお手伝いをしているような印象になっています。

金銭面でのアレコレはインフレしすぎていて、最安ポーションですら数千するありさま。

ポーションは即時回復する分とリジェネ(HP自動回復)分が存在。 この“リジェネ”や、“バフ”のように(MMO)RPGをそれなりにプレイしていないと理解し難い用語が頻出する点は、雰囲気はあるけれどもジャンル初心者には理解しにくいかも。

最序盤のクエストでも得られるお金が1万も! しかし実際はポーションを数個買えるだけ。 経験値に至っては全くもって足りない。

もちろんそれに合わせて、クエストでの報酬もインフレを起こしているわけですが、金銭感覚が最初から崩壊しまくっていて何が何やら。

このへんは原作の設定を大事にしたのでしょうけれども、本作の設定で「階層移動時に不具合が起きて、スキル初期化されてしまった」というものがあるので、いっそのこと「レベルやアイテム・所持金類も初期化されちゃいましたー」のゼロスタートでもよかったのでは?と思います。

ただまぁ、本編はともかく、かなり広大なマップを探索できるホロウエリアや、レア・強装備収集の楽しみ、高難易度のホロウミッションなどなどやりこみ要素は豊富に揃っているので、楽しめそうな要素はかなり多く盛り込まれています。

雑魚戦は基本はサクサク進行。 「とにかく褒めまくれ!」とモテナイ男がモテ術()を真に受けて愚直に実行するが如く、とにかくパートナーを褒めまくってSP(スキル発動に必要)を回復しつつ戦っていきます。

ボス戦では多くの他プレイヤー(NPC)と協力して、強大な敵に立ち向かう。 まぁ、基本はキリトさんがほとんど全てこなさないとならんのですが。

ラストアタックボーナスも実装。 NPCが持って行っちゃうこともあるので、トドメがさせそうになったら後方退避の命令でも出してトドメをいただきましょう。 職権乱用だよキリトさん!

ひとつのゲームとして: とにかく粗い

とまぁ、なんだかんだで遊び込めそうな本作ですが、それはあくまでもキャラゲーとして見た時の場合です。 では、ひとつのゲーム、ひとつのRPGとして見た場合はどうでしょう。

残念ながら、作りが粗く、オススメしかねる出来です。

不満点は主に戦闘部分に集約されており、やればやるほどダメな部分が浮き彫りになってくるという残念仕様。

他のキャラを守るために壁際に引き寄せるとこのありさま。 カメラワークと、ひどいとしか言いようのない仕様の二重苦が本当の敵。

ダメな部分は数え切れないほどあるのですが、個人的に「これはないわー」という部分をいくつかピックアップ。

・AoEの仕様が最低最悪
AoE=Area of Effect つまり範囲攻撃なんですけれども、発動前に攻撃範囲が表示されるんですが……基本的に斜め見下ろしの上に微妙に地面から浮いた状態で表示されるので、まず見づらいのが難点。

そして、ターンテーブル的挙動の強力かつ長時間に渡る軸合わせで何が何でも当ててやろうというリアリティのない仕様。

更にひどいのは、なんとか使い勝手の悪すぎる(出が遅い、すぐ潰される)スタンスキルや、SP消費の激しい回避スキルでなんとかしのいでも、AoEに続くAoEの連発でやはり何が何でも当ててやろうという攻撃ルーチンです。

もうここまで来ると回避やスタンも面倒くさいというかやってられないので、その場で全弾被弾で耐えることにしました。 これにはもう相当うんざりです。 ここまでひどいAoEはこれまでに見たことがないです(AoEの体をなしていないクソ仕様は体験しましたが)。

・AIが無能
そんなAoEと共にプレイヤーを苦しめるのがAIのお粗末さ。

少なくともパートナーに選んだキャラは戦闘不能にしてはいけない(死亡するとゲームオーバー)ので、前述のクソAoEを自分に引きつけて被弾させないように立ちまわるわけです。 タンク的なポジションで。

しかし、健気なAI諸君は「あなたひとりだけ危険な目に遭わせるわけには!」と思ってか、わざわざ隣接してくるんです。 そして仲良くAoE被弾。 もちろんダメージ頭割りなんてありませんから、プレイヤーの苦労を一瞬で水泡に帰すだけです。

逆パターンも存在し、自分のピンチ時にスイッチし、タゲをパートナーに持ってもらっていると、何を意図してかパートナーが近づいてきてAoEに巻き込もうとしてくる場合もあります。 巻き込むんじゃねえええええ!!!

こういうNOOBな動きのわかっていない初心者プレイヤー(を思わせるNPC)を大量に率い、守り、支援し、回復しつつ、ボスにダメージを与えていくという、タンク・アタッカー・バファー・ヒーラーの全てをキリトさん(つまりプレイヤー)がこなさないといけないという、俺TUEEEEを通り越して超絶介護プレイを要求されるのです。

他にも、「スキル性能いかんによらず、ソードスキルのSP消費がほとんど100固定で色々アレ」とか、「スーパーアーマーついてても体感できないほど攻撃潰されまくる」とか色々ありますが、大味すぎるバランスと合わせて全体的に粗雑な作りです。

本編におけるストーリーや、演出も極薄。 もしくは気持ち悪い

戦闘以外でも、ストーリーの内容や展開、演出の薄さも気になりました。

アークソフィア以外の街は、選択肢でショップなどを選択するだけ。 新たな街を散策するなどの楽しみはない。

キャライベントを除いて、基本的にダンジョン攻略中は大した会話も存在しません。 キリトさんがダンジョンギミックについてヒトコトフタコトつぶやく程度ですし、NPC会話も特に無いです。

また、ヒロインと会話して好感度を上げることができるんですが、会話になっていない受け答えをするだけの面白くもなんともないシステムだったりと、交流面でも薄い印象。

そして失望したのは各階層でのボス戦。

ボス部屋の扉の前で、アスナが突入メンバー全員に向けて「必ず生きて帰ってきましょう」と言うわけなんですが。

ボス部屋前に至るまでの構造、アスナの発言、カメラワークなどが完全コピペ。 戦闘終了後の会話も同じで、寸分違わぬ演出を毎度見せられることになるわけです。 テキストだけの演出だというのに、この手抜きっぷりにはほとほとガッカリです。

ダンジョン攻略(敵を倒す、謎解きとはいえないレベルの至極単純なギミック処理)しつつクエスト消化してボスに備え、ボスを倒して次へ。

これを延々と100階くらいまで繰り返すだけで、先へ進んでいるという攻略感や達成感などなど、そうした起伏や変化が全く感じられないのが大きなマイナス点といえます(手軽なRPG系アプリに感覚は近い)。

あとはまぁ……キャラゲーというか、どうしてもヒロインとのアレコレがある作品ですので、イベントもそうしたものが存在するんですが。

これがまた気持ち悪いものが多いです。

内容としてはSAOでなくともよさげな無難なもの、それなりに各キャラに則した内容のもの、誰かと話していたらヒロインが全員集まってきてキリトさんハーレム状態でタジタジ系イベントの3種類がほとんど。

後者に移るほど気持ち悪いという気持ちは強くなり、悪い意味で鳥肌ものの展開を味わわせてくれます。

触手&液体で服が溶ける~とか、体温低いから自分の体熱で温めてあげよう~とか、体勢崩したら手がガッチリと胸をホールドして~とか、お約束すぎかつ「どうしてそうなるんや……」と陳腐さと強引さに嘆息ものの展開が目白押しです。

いやね?リーファというか直葉は好きですよ。 おっぱいだし、お尻だし。 しかしなんというか、こういうのはちょっとなぁ……柔らかそうだけどなぁ……。

という、苦笑が漏れる類のイベントの数々で悪い意味で悶絶間違いなし。 本作ならではの良い意味での悶絶ポイントが欲しかったのだけれども、基本的には気持ち悪い方向に特化してるかなと。

「とりあえずエロかわいければなんでもいいよ!」というならいざしらず、原作やアニメありきで各キャラに思い入れがある場合、彼女らのキャラクター性を深めることはほとんどないのが、「キャラゲーと言いつつも、キャラを大切にしていないありふれたキャラゲー」と共通しているのは残念なところです。

総括

なんというか、気になり始めるとあれもこれもダメじゃないか!とどんどん負の連鎖を引き起こしていく作品です。

特に戦闘まわりの仕様・完成度と、スッカスカな本編のストーリーや演出が致命的で、本作にガッツリとのめりこみハマりこむのは難しくしています。

一方で、トレハン要素やマッタリプレイもできる(基本的に)ユルくヌルい雑魚戦、ちょっと面倒だけど超絶ヌルいクエスト、大味でバランスもアレだけども割と適当でもなんとかなるボス戦など、良くも悪くも大味なバランスのために惰性でダラダラとプレイしてしまうのも事実。

アレすぎる戦闘の仕様・完成度に悪態をつきつつ、暇つぶしにプレイする分にはなんとか応えてくれる作品にはなっているので、サブ……の更にサブプレイ用タイトルくらいな気持ちで遊ぶくらいがちょうどいいかと思います。

ただし、SAOファンなだけで非MMOプレイヤーの方、RPG不慣れの方、SAOに触れたことがない方は、用語や関係性などなどもろもろの障害が立ちふさがるかと思うので、ひととおり最低限のSAOや(MMO)RPGについての知識を得る必要もあるかもしれません。

書いた人はこんな人

壬生狼
壬生狼(みぶろ)と申します。 miburo666/ルプス(Lupus)は概ね同一人物。 ゲーム、音楽、映画/アニメ、イラストなどが趣味。 ここでは音楽や映画/アニメを中心に、趣味関連の記事を書いていきます。
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