「トータル・リコール (2012) (原題:Total Recall)」 レビュー

トータル・リコール (1990)のリメイク作品。ベタリメイクではなく、舞台が地球のみであることなど、独自の設定も多く盛り込んだ作品です。

21世紀末の大戦により、多くの土地に人が住むことができなくなった世界。人々は、UFB(富裕層)とコロニー(貧民層)にわかれ、コロニーの住人は”フォール”と呼ばれる地球を貫通したエレベーターを利用しUFBに出稼ぎをしていた。この状況に反抗するべく、レジスタンスによる工作活動が日常的に起きているのであった。

主人公であるダグラス・クエイドもコロニーに住む人間のひとり。彼もまたUFBで製造業に従事していたが、日頃から見知らぬ施設で見知らぬ女と共に追っ手から逃げるという、奇妙な夢を見ることを悩んでいた。

仕事先での昇進の話もなくなり、わずかな希望をも失った矢先、素晴らしい記憶を売るというリコール社の存在を知る。友人に引き止められつつもリコール社に足を運んだ彼だったが、リコール社へ行ったことがきっかけで、それまでの全てが一転していくことになる。

なかなか頑張ったリメイク作だと思います。もちろんオリジナル版の強烈なインパクトや内容には及びませんが、一本のSF/アクション映画としてそこそこ見られる分類。世相に応じた設定に切り替えたのは、時代柄なのでしょうね。

ここがイイ!

  • 派手で迫力あるものになったアクションシーン。
  • そこそこ面白い本作独自のギミック。
  • オリジナル版を見た人に対するサービス。嬉しいオマージュが時折見られます。
  • オリジナル版と比べると女性陣の全体的なパワーアップ。身体能力と外見などなど。

微妙・惜しい

  • ストーリー展開などは良くも悪くも無難な出来。シリアス路線ゆえ、オリジナル版のような愛着あるものではない。
  • オリジナル版と比較して敵役・脇役の魅力が減退。単体で見ても薄味。
  • オリジナル版と似ているようで、微妙に印象が違うエンディング。こっちは悪い意味でモヤモヤが残ります。

ここがダメ!

  • 世界観とかは面白いんだけど、既視感があるものがそれなりに多い。なので、独自と言いたいけれど、独自と言い切れないところがなんともはや……。
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詳細

さてさて、TSUTAYA限定のレンタルということで、わざわざ遠くてちと高いTSUTAYAまで行って来ましたが。果たしてそこまでする価値があったのかどうか、っというところなんですが。

あまり期待していなかった分、割と楽しめましたよ、これ。

オリジナル版との比較が多くなりそうですが、ご容赦ください。

火星ではなく、地球に舞台を固定した意味

オリジナル版では火星が舞台となり、荒唐無稽ながらもインパクトのある演出と物語で楽しませてくれました。ところがリメイクとなる本作は、地球で物語が進行していきます。このあたりで、スケールの小ささを指摘する声もあります。

しかし、本当にスケールは小さくなったのでしょうか?

オリジナル版も火星を舞台にしているとはいえ、ごく一部の居住区画での物語でしたから、オリジナル版のほうがスケールが大きかったというのは思い出補正が大きいと思われます。

本作の設定は、地球上で富裕層と貧民層が物理的に大きく隔てられているというもので、経済不安や格差が埋まるどころか拡大していく昨今の情勢を見るに、この世相を反映した現実味と皮肉などといったメッセージを過分に含んでいると思われます。

コミカルなノリも含まれたオリジナル版に比べ、やや少しだけ、社会派なメッセージ性を含ませたものが今回のリメイク版ということになるでしょう。

そのせいか、本作はシリアス路線で、驚きと笑いを与えてくれるような場面はほとんどありません。モダンな、迫力とスピード感溢れるSF/アクション映画となっています。

とはいえ、リアル路線かといえばそうでもなく。ファンタジーでありフィクションなものとして、コロニー住民の移動用施設”フォール”の存在があります。

これはイギリス・オーストラリア間を、地球のコア付近を横切って……つまり地球の中心を貫くような形で開通している、超巨大エレベーターです。これも重要な施設となってくるのですが、こういう破天荒さはトータル・リコールのアンリアルな一面を引き継いでいるのかなぁと。

オリジナル版ほど深みはないし、逆にツッコミどころも控えめな印象ですが、モダンな形で作るとなるとこうなるのは必定なのだろうと納得の作りです。

登場人物はパワーアップしたり劣化したり

まず、パワーアップしたと思う点から。

なんといっても今回は、クエイドの妻や夢に出てくる謎の女のスペックが向上。オリジナル版のシャロン・ストーンの魅力はぶっちぎりなわけですが、それ以外の所で身体能力とか諸々が全体的に底上げされております。

なんといっても、クエイドの妻・ローリー。こちらを演じるのはアンダーワールドでクールで美しいヒロイン・セリーンを演じた、ケイト・ベッキンセイル。これがなかなかの”鬼嫁”っぷりでして、オリジナル版を見た者としてはビックリなキャラクターとなっておりました。

対する謎の女・メリーナも、今回は少し肉体的にもタフになり、外見もより美しくなりました。それでもやっぱりローリーの陰に隠れてしまうのは、もはや宿命なのかもしれませんが。

クエイド自体はコリン・ファレルが演じています。あの頼りなさ気・情けない風貌が、コロニー市民像としてはマッチしており、それゆえ、アクションシーンでの切り替わりがギャップとして成功しています。 また、労働階級として生活していたということも後々役に立つシーンが有ったりと、クエイド自体の描写はほぼ上方修正と言ってよいでしょう。

これらの人物はいいのですが、逆に敵役であるコーヘイゲンや、レジスタンス首領のマサイアス(オリジナル版のクワトーのポジション)なんかは、あまり魅力のないものになってしまいました。

これは比較せず単体で見てもそう言えるわけで、良いキャラクターというのは登場時間が短くても強烈な印象を残していくものですが……こちらのお二方はキーパーソンと言える立場なのに、サッパリ印象に残りません。なんというか、大物のはずなのに小粒。

そんなこんなで、おしなべて見るとプラスマイナスゼロになっちゃうのかなぁ、と思わなくもないですね。

後半はちょっとあくびが出ちゃう

そんな感じでまずまずの作品であるわけですが、後半部分……というか、チェイス部分を終えて反撃に転じる辺りから少しつまらなくなってきます。もちろんそこでのアクションシーンや演出は派手さを増し、むしろ絵面的には最高潮となっていくところなんですが……なんでかのめり込めず、あくびが出てしまっていたのですよねぇ。

直前にオリジナル版を見ていたために、大枠が同じであるゆえに飽きやすかったのかもしれませんが、それだけでもなさそうです。

物語後半での「真実を知るシーン」での衝撃度がイマイチというのもありますかね。オリジナル版だとなかなかショッキングなシーンでありましたが、本作ではあっさりめに明かされるので「ふーん、そうなんだー」程度に収まってしまっています。

そういう細かな演出の積み重ねが本作では物足りない印象で、もったいないことをしているように感じられました。

オマージュについて

独自設定を盛り込んだ本作ですが、オマージュやファンサービスも忘れていません。

おっぱいが3つ付いている女性だとか、「火星に旅行の記憶を買った男」がセリフに出てきたりとか、腕がもげたりとか、”フォール”で移動中にクエイドが某英国スパイの小説を読んでいたりとか。

それらはオリジナル版へのオマージュであったり、小ネタであったりと様々ですが、配備は完璧とはいえないまでもそこそこ効果的に描かれていたように思います。

個人的に気に入ったのは検問所でのシーン!ま、まさか、あの人物が登場してあんなセリフを言っているなんて!!

ここの面白さはやはり、オリジナル版を見た人だけの特権と言えましょう、

初見さんにはどう映るか

では総括の前に、今回はじめてトータル・リコールを見るという人にはどう映るのか書いてみます。とはいっても、繰り言になってしまうのですが。

既視感があるとはいえ、格差社会をベースにした大胆な世界観構成は印象に残るでしょう。これはTIME (原題:IN TIME)なんかでも見られる世界観ですが、本作のコレはとんでもないレベルでの物理的格差が描かれています。

冒頭に書いたように、地球に穴を掘ってエレベーター開通させてるんですよ?それで、ほとんど世界の端と端に富裕層と貧民層を分ける。なかなかイカれた設定・デザインだと思います。

そこで映し出される対照的な町並みや、展開されるアクションは見ていて楽しいです。まず、退屈はしないでしょう。そういった意味で、娯楽作品としては及第点以上のものがあります。

シナリオは若干弱く感じられるかもしれませんが、自分が何者かわからないままに戦う不安や、最後の最後で「ん?」と思わせる演出など、サスペンス的な要素も若干ながらあります。

なので、オリジナル版を見ていなくても割と楽しむことが出来る作品ではないかと思われます。もちろん、すみずみまで楽しみたいのであれば、オリジナル版の鑑賞も視野にいれるべきですがね。

総括

長くなってしまいましたが、まとめです。

オリジナル版を見ていない人:
ほどよくオススメ。アクションシーンも派手だし、世界観設定もそこそこ面白い。既視感ある演出や設定も、映画を普段あまり見ない・これまで見て来なかったのなら問題ない。

オリジナル版を見た人:
オマージュや小ネタは楽しめる。肝心の本編内容は、オリジナル版と比較しすぎなければまずまず楽しめる。大枠が同じだけの、全く新しい作品として見るのが一番オススメ。

っといったところでしょうか。

リメイクながら独立した作品として見るべき作品ということで、オリジナル版にあったもの全てを本作に求めるとガッカリすることはうけあいです。

しかし、完全にはじめて見るだとか、独立した別個の作品として本作を見るならば、なかなか面白みのあるSF/アクション映画として楽しむことが出来るでしょう。

見なくても損はしない作品ではあります。とはいえ、見ても時間の無駄でもない。娯楽作品としてはまずまずよくできた作品ですので、ここまでさんざんオリジナル版と比較しつつレビューして来ましたが、オリジナル版の存在を必要以上に気にせず、気楽に見ると予想以上に楽しめるかもしれませんよ。

書いた人はこんな人

壬生狼
壬生狼(みぶろ)と申します。 miburo666/ルプス(Lupus)は概ね同一人物。 ゲーム、音楽、映画/アニメ、イラストなどが趣味。 ここでは音楽や映画/アニメを中心に、趣味関連の記事を書いていきます。
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