「極限脱出ADV 善人シボウデス」 レビュー

※本記事はPS Vita版についてのレビューです。

チュンソフト制作の脱出系作品。 お得意のNVL的な要素を加味し、独特なシステムを構築しています。

主人公であるシグマは閉ざされたエレベーターの中で目覚め、そこでファイと名乗る少女と出会う。 出会ったこともないはずの彼女は、なぜかシグマの名前を知っていたが、それ以外のこと――例えば、今置かれている状況などは知らないようだった。

なんとかエレベーターから抜けだしたふたりは、自分たちの他にも数名いることに気がつく。 そして彼らは、命がけのゲームに参加を余儀なくされるのだった。 なぜここに連れて来られたのか?ゲームの目的とは? 時に協力し、時に裏切りながら謎を解明せよ。

PS Plusのフリープレイに提供されていたということもあってプレイしてみましたが、なんとも微妙な作品です。

シナリオは程よくシリアスで後半には盛り上がりも見せるものの、緊迫感や興を削ぐ表現もあってどっちつかず。 操作関係もPS Vitaに最適化されておらず、様々な所でストレスが溜まったりも。 フリープレイないし中古・廉価価格ならまだしも、フルプライスで遊ぶ程でもない作品です。

 icon-smile-o ここがイイ!

  • 古典的とも言えるシチュエーションながら、適度なペースと量で伏線や情報を小出しにすることで楽しめる「謎」の生かし方がイイ。
  • ノナリーゲームというシステム上、裏切りがついて回るわけで、そのあたりでの疑心暗鬼や不信感の猫写がなかなか秀逸。

 icon-meh-o 微妙・惜しい

  • 終盤の展開。 なかなかにアツくニクい展開を見せるも、納得出来ない部分もあります。
  • 悪い意味でスッキリしない終わり方。 カタルシスも薄め。
  • 脱出パートの出来は簡単すぎず難しすぎずで考える楽しさがあるのはいいのですが、与えられるヒントの説明がわかりにくい・まどろっこしいものも一部にある。

 icon-frown-o ここがダメ!

  • しょうもないギャグ・(下)ネタ。 英語圏の物語であるはずなのに、クスリとも笑えないオヤジギャグなどが頻出し雰囲気ぶち壊し。
  • 3DSには最適化されているであろう操作性。 つまり、PS Vitaで遊びにくいということ。
  • アイテム持ち替えは煩わしく、アイテムの回収・設置も判定がテキトーすぎてダメダメ。
  • リアルでも美麗なわけでもないグラフィック。 不気味。 かといってイメージイラストの雰囲気も出ていない。
  • スキップできない、冗長で無意味な演出。
  • 進め方によって矛盾や情報開示順がメチャクチャになる。 そういうのに限ってシナリオロックされていない。
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よくできた脱出ゲーム

信じたいけれども、安易に信じられない。 協力したいけれども、出し抜かれるかもしれない。

そんな疑心暗鬼渦巻く、良い感じの人選とルールに縛られたシチュエーションで展開される脱出ゲームということで、なかなかに緊迫したストーリーが見ものですね。

脱出パートもアイテムをそのまま使ったり、組み合わせたりして仕掛けを解いていくオーソドックスなものながら、どのギミックも概ね丁寧に作られているので楽しいです。

私は脱出ゲームをあまりプレイしたことがないのですが、そんな私でも考え、試し、突破できた時には程よい達成感も得られたので、割と広い層に楽しめるように作られているのだと感じました。

一部のヒントは表現や文章がまどろっこしかったりわかりにくかったりしましたが、全体的に難易度は程々といったところで難しすぎるということはありません。

そんな世界観をぶち壊す諸々

そんな本作、シリアス路線を突っ切ればいいものを、ちょこちょこ挟んでくるしょうもないギャグが台無しにしてくれます。

登場キャラは日本人だけでなく、英語圏の人間も多く、半数くらいは日本語を話せないと目される人間たちです。 そこかしこに書かれるメッセージであるとか、文字も全て英語ですし、キャラの発言からしてもアメリカ在住の人間が舞台となる施設に連れて来られたのは明らかです。

しかし、会話シーンや謎解きシーンでたびたび(そう低くない頻度で)本当にくっだらないオヤジギャグや、無意味な下ネタなどが飛び交うことになるのです。

考えなくともオヤジギャグは日本語圏のものですよね。 近いものは英語圏にもありますが、本作で使われているものは布団がふっとんだレベルの全くもって笑えないものばかりでウィットとは無縁。 そんなものが、命がけで心理戦を繰り広げたり脱出ゲームを繰り広げている時に、なんの脈絡もなく入り込んでくるので「おい、真面目にやれよ!」と言いたくもなります。

そして更にたちが悪いことに、オヤジギャグを言うのは一人だけじゃないということ。 そりゃ、常に気を張りすぎていてもイカンのでしょうが、軽口は時と場合を選べと。 加えるなら、どうせ軽口を叩くなら笑えるものにして欲しかったと思うばかりです。

それくらい本作に含まれるギャグに相当するものは場をしらけさせ、プレイヤーに冷ややかな感情をもたせるだけで、存在意義(とユーモアのセンス)がないものです。

そんなありさまですから、本来は物語の理解を深めたり伏線にもなるであろうアーカイブ(Tips)にまで不用意にネタを仕込んであったりします。 もし、クリエイター陣がこれらを“面白い”“ウケる”と考えて採用したのなら、その読みは大外れです。

グラフィック・システム・快適性もイマイチ

3DS向けに開発していた、というのを抜きにしてもこのグラフィックはなんなんだ!と。

3Dポリゴンモデルで表現されているものの、出来の悪いフィギュアとしか言いようのないレベルのクオリティであり、キャライラストの印象からもかけ離れた粗悪なキャラモデルです。

どんな場面でも口角あがりっぱなしで不気味な四葉や、口パクが気味の悪いメインヒロイン?のファイなど、色々と破綻している部分も多いです。 幸い慣れてくるというか諦めが付くのでありますが、擁護のしようはありません。 普通に2Dの立ち絵でよかったのでは、と思います。

操作性もダメです。

謎解きがメインとなる作品ゆえ、本作にはゲーム内で実際に手書きでメモを取れるのですが……全くもって実用に堪えない死にシステムです。

指でなぞっても思うように描けず、爪先で線を引こうにもキレイに書けません。 恐らく3DSのタッチペン操作であれば問題ないのでしょうが、PS Vitaにおいては全く機能していないシステムです。

視点の移動も自由カメラ(FPSのような感じ)でよかったんじゃないかと感じました。 スティック操作では微妙な位置にあるオブジェクトにアクセスするのでイライラさせられたりしましたし、かといってタッチ操作が快適と思ったこともありません。 あくまでもPS Vita版は3DS版のついでに作られたんだなぁと思わざるを得ません。

あとは、無意味な演出が気になります。

舞台となる施設は広大で、様々な部屋やエリアに分かれています。 そしてプレイヤーらが移動すると、マップが表示されて人物が移動している様子が映し出されるのですが……これを用いたギミックや伏線がなく、既読でない限りスキップ不可能なためテンポが非常に悪いです。

更に一部の部屋やエリア進入時にはドアの開閉の演出も入るのですが、こちらも上と同じで演出の必要性は皆無であり、テンポの悪さに拍車をかけています。

順当に行けばボリュームもプレイ時間も控えめな本作ですので、「これで時間稼ぎしてるのか?」と邪推したくもなる部分ですね。 コンプリート目指すと何度もこのマップ移動やドアの開閉に立ちあうので、もうウンザリです。

美麗で目を奪われるとかそういうものでもない、本当にどうでもいい演出なので、そういう意味では頻繁に入るムービーシーンよりたちが悪いです。

総括

物語の本筋自体は結構楽しませてくれるもので、ほどほどに先が気になる構成になっていていいのです。

が、そこに至るまでに通過しなければならない、数多の氷点下レベルのつまらないギャグの応酬や、テンポを削いで没入感を著しく削ぐ各種無駄演出、謎解き時に使うべきなのに結局使えない操作関係など、クリエイターの発想力・開発力の偏在欠如が障害となります。

ストーリーだけで見ればまずまず良作である一方、システム面・操作面などを見ればクソゲーと揶揄されても仕方の無さそうな部分もあったりと、もったいないことをしている点が多すぎます。

フリープレイだから我慢できてコンプリートまで遊んだものの、これをフルプライスで買ってしまっていたら口汚く罵っていたかもしれません。

フリープレイでのプレイか、中古・廉価版でのプレイ推奨であり、定価購入する価値はありません。

極限脱出ADV 善人シボウデス

書いた人はこんな人

壬生狼
壬生狼(みぶろ)と申します。 miburo666/ルプス(Lupus)は概ね同一人物。 ゲーム、音楽、映画/アニメ、イラストなどが趣味。 ここでは音楽や映画/アニメを中心に、趣味関連の記事を書いていきます。
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