こちらで更新継続中。「マイウェイ 12,000キロの真実 (原題: 마이웨이)」 レビュー

「マイウェイ 12,000キロの真実 (原題: 마이웨이)」 レビュー

マイウェイ 12,000キロの真実 Blu-ray & DVDセット(初回限定生産)

オダギリジョー、チャン・ドンゴンの主共演で送る、マラソンが繋いだ戦場の絆。

第二次大戦中の幼少時に、京城(現ソウル)にて二人の少年は出会った。二人の共通の趣味といえば「走ること」。互いにライバルとして競っていた二人だったが、ある事件をきっかけに憎みあいながら散り散りに……。

やがて時は流れ、戦争が激化するノモンハンの地にて二人は再会する。かたや大佐、かたや一等兵として、確執を引きずりながら。

実話を元にしているとあるものの、描かれたのはファンタジー要素が非常に多い戦争映画。ほどよい感動もあるにはありますが、巨費を投じた割にはツメが甘い点が多いです。

 icon-smile-o ここがイイ!

  • ノモンハンに始まり、スターリングラード攻防戦、ノルマンディ上陸作戦など突拍子がなくも盛り沢山な戦場。
  • 日本の観客にもだいぶ配慮した、「反日まっしぐらではない」スタンスをとろうとしたのが伝わってくる。
  • 深みはないものの「走ること」が繋ぐ2つの人種間の絆というものは、シンプルながらも中々美しい。

 icon-meh-o 微妙・惜しい

  • 史実に基づいていると言いつつもファンタジー要素が大半を占める。物語性はある一方でリアリティなどは低め。
  • それなりに朝鮮人も日本人も描き分けはされているものの根底には画一的なものが感じられ、登場人物が主役二人を除いて記憶に残りにくい人物ばかり。

 icon-frown-o ここがダメ!

  • 考証は概して甘め。
  • 演出面での見せ方、間のとり方、取捨選択がイマイチ。
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詳細

大金を投じて監督が本気で望んだ本作は、確かに映像面でなかなか迫力のある、まごうことなき戦争映画として完成されていました。

中でもノモンハン→ソ連捕虜となってスターリングラード攻防戦参加→生き延びてノルマンディ上陸作戦の防衛戦へ……という流れは、戦争映画の数々のいいとこ取りといったところで、視覚的には結構楽しませてくれます。

ややスケールが小さく感じる場面もないではないですが、全体的には堂々とした作りで安っぽさはありません。

“史実を元にしている”というところに引っかかるとダメ

本作を鑑賞する上で引っかかるのは、「実話を元にしている」という部分。

実は本作はとある1枚の写真からイメージを膨らませて制作した、れっきとした「創作物」なのであり、史実や実話を元にしたという部分は時代設定を除けば「ドイツ軍捕虜に東洋人がいた」という点のみ。

別にその東洋人が語った体験を物語にしたわけでもなく、あくまでも1枚の写真に裏付けられた「ドイツ軍捕虜の東洋人」という設定からこの作品は成り立っているのです。

ですから登場人物の多くは架空の存在であるでしょうし、当然各地を転戦したというのも想像で描いたもの。まして本作のような各地の戦場経験をしたかは……。

他にもそもそもオダギリジョー演じる辰男のスピード出世や、ライフルで○○撃破など設定に無理があったりいかにも映画的・ファンタジーな設定や演出が盛り沢山なのですから。

というわけで本作はファンタジーなんだという前提を持って見ればまだしも、記述にあるような「史実・実話を元にした」「真実」を期待するとのめり込めないでしょう。

演出・描写の雑さで損をしている

強く感じたのは、特に導入部での演出・描写の雑さ。

丁寧に描くべきところがかなり駆け足気味に過ぎ去ってしまい、また、主役二人の成長がかなり飛ばして描かれているために外見もパッパッと変わったりと、なかなか感情移入や没入までに時間がかかってしまっている印象です。

ここが弱いので感動のエンディングになるはずだったところでも、どこか不発気味に。

また物語に華を添える脇役たちも描写不足だったりイマイチインパクトに欠ける者が多く、最後まで観ても名前と顔が一致していない人物が多かったり。

これらは2時間超という大作でありながら前述の戦場の詰め込み過ぎが原因ではないかと。それゆえに長尺を以ってしても、どこか間延びしているというか、全体的に没入感や拘束力などに欠ける結果につながっているように思います。

恐らく見せたかったのは両者の絆でしょうから、もっとそこにフォーカスした演出や構成で迫るべきだったと感じてなりません。

総括

テーマは面白かったものの、やや期待はずれというかもったいない作品でした。

特に今現在は日韓の関係が冷え、ピリピリしている状態なわけですが、映画で友好(理解・譲歩)を唱えるとしても一歩も二歩も足りていない印象。

言い方は悪いですが両国の顔色を窺って気を遣い、その結果、本作のような物足りない印象のものに仕上がっているのはほぼ確実。
※日本海の表記まわりでバッシング受けたそうですよ。

その辺りも「史実・実話を元にしている」という触れ込みが仇となっているわけですが、映画……それもファンタジーでくらいは、中立的・客観的でいて政治的確執を思い出させないような感動を与えて欲しかったな~というのが素直な気持ちです。

手腕や着眼点自体は悪くなさそうなので、是非とも今後は日和ったりせずにズバッと斬り込んだ映画を作って欲しいところですね。

というわけで、史料や史実を重視しての鑑賞にはとても堪えうるものではないです。一片を描いている部分もあるかとは思いますが、だいぶ史実とかけ離れた設定が数多く見受けられます(識者は更に深く突っ込んでいましたが)。

しかし、日韓関係が劣悪な今だからこそ、そういった部分に青筋を立てるよりもこの映画にちょっとした救いを見てみるのも悪くはないとは思うのです。

書いた人はこんな人

壬生狼

壬生狼(みぶろ)と申します。 miburo666/ルプス(Lupus)は概ね同一人物。 ゲーム、音楽、映画/アニメ、イラストなどが趣味。 ここでは音楽や映画/アニメを中心に、趣味関連の記事を書いていきます。


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