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「英雄伝説 零の軌跡 Evolution」 レビュー

PSPで発売された日本ファルコムの「零の軌跡」に追加要素を盛り込んでPS Vitaに移植した作品。 バグがあったり、主人公のロイド君が嫌すぎてなんだかんだで一年越しのクリアです。

プレイヤーは特務支援課に所属する新米警察官となり、クロスベル自治州という地域に根付く巨大な悪や陰謀の存在を知り、仲間たちと立ち向かっていくという内容になっています。 前シリーズ「空の軌跡」ともつながりがあり、ゲスト参戦の域を超えた新旧共演もあり。

私は軌跡シリーズ……どころか日本ファルコム社のゲームは初だったのですが(それを踏まえてレビューを読んで下さい)、手堅い印象のJRPGがこんなところにもあったのか!と発見の喜びを感じた一方で、数多くの不満を抱える作品でもありました。

恐らく軌跡シリーズの色・空気というか方向性に私があまりマッチしていないのかもしれませんが、手堅さが平凡さに映り、キャラへの感情移入に窮し、粗さだけが後に残ってしまう結果となってしまいました。

 icon-smile-o ここがイイ!

  • わかりやすく、親しみやすいシステム群。 いいとこどりといった印象で、すんなりなじめると思われます。

 icon-meh-o 微妙・惜しい

  • よく言えば、手堅く王道な物語。 悪く言えば、意外性や驚きのない陳腐な物語。

 icon-frown-o ここがダメ!

  • キャラクターの作りこみ・猫写。 前作キャラが今作キャラを食っちゃっています。
  • 戦闘バランス。 極端というか、大味?
  • ダメなシンボルエンカウントシステム。
  • テクスチャが汚い。 ポリゴンモデルは仕方ないとしても、これは手抜きでは?
  • フォントも汚い。
  • 一部の音声周りの不出来・不具合。
  • 致命的なバグ(※パッチにて修正済み)。 有料デバッグさせられたことで心象は一気に悪くなりました。

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最近注目されてきたのはうなずける、かも。

あくまでも私の印象では、割とここ最近になってから本作の注目度が大幅にアップしたように思えるのですが、触ってみてそれも頷ける気がします。

まさにこれまでにJRPGがつちかってきたものを(いい意味でも悪い意味でも)いいとこ取りしたような作りとなっており、シナリオの内容的にも本作から入った人も問題なくプレイできたりとハードルは低く設定されています。

アニメ調のキャラクターに実力派声優を起用し、見ているこちらがこっ恥ずかしくなる小イベントなどなど、モダンなJRPGのデザインを踏襲しつつも、どこか根底には昔ながらのRPGを感じるフシもあり、長年ゲーム制作を続けてきた老舗らしさを感じさせられる作品となっています。

ただ、本作ならでは!というものもないかなぁ

手堅さはさすが!といったところではあるのですが、あまりにも手堅すぎてこれといったインパクトや新鮮味に欠けるのも事実です。

警察を主人公にしたRPGというのは珍しいとは思うものの、内容を見てみればそれほど真新しいものではないし、後述するキャラ猫写の問題もあってイマイチのめり込めない&盛り上がらないといった印象。

ストーリーに力を入れている、みたいなのをどこかで聞きかじって臨んだせいか肩透かしを食らってしまいましたね。

別になんでもかんでも奇抜さを追求すればいいということではなく、心に残るシーンだとかそういう感動を与えるモノがなにかしらあっても良かったんじゃないかと思うのですが、大筋とは関係ないところ(正確に言えば前作キャラ絡みのところ)の方でかえって力を入れている印象を受け、方向性に疑問を持ってしまいましたね。

ただまぁ、全体的に無難でハズレ!というほどでもないんで、モダンなJRPGの入門編としてはいいんじゃないでしょうか。

キャラクターの猫写に難あり

これには三点あり、ひとつめは「メインキャラクターの魅力に欠ける」、ふたつめは「メインキャラ間の空気が気持ち悪い」、みっつめは「前作キャラがでしゃばりすぎ」。

ひとつめ、「メインキャラクターの魅力に欠ける」ですが、他のふたつとも無関係ではないです。 なんだかティオだけ掘り下げられていて、他の三者(特にエリィとランディ)が薄っぺらいんですよね。 逆に言えば、ティオ贔屓が過ぎるとも言えるのですが。

一応バックボーンはキャラのセリフなどからうかがえるものの、感情移入を促すほどのものでもなかったりと、イマイチ効果をあげられていない印象です。

ふたつめ、「メインキャラ間の空気が気持ち悪い」とは、つまりは終始仲良しこよしが過ぎるということです。

メンバーは警察官+αという立場上ゲームの冒頭ですぐに揃うことになるのですが、いきなり好感度がMAXに近い状況で始まります。 以後、メンバー間でのトラブルや確執などは一切なし。 過去に何かあっても「なんでも受け入れるよ!」と即座に菩薩のような広い心を展開し、受け入れてしまうので広がりようがありません。

特に主人公であるロイド君を中心としたアレっぷりが顕著です。 推理シーンにおいてはドヤ顔ドヤ声で推理を披露したところ仲間内から絶賛の声があがり、仲間が抱えた闇を吐露する場面ではキメ顔キメ声でクサすぎてうんざりするようなセリフを口走ってキュンキュンさせたりと、リアルに「うへぁ」と声が出るほど鳥肌必至のシーンが満載です。

お互いに最大限絶賛しあっている集団は珍妙でうす気味悪いですよね。 本作の主人公パーティにはそれが感じられるのです。

最後の「前作キャラがでしゃばりすぎ」ですが、そのまんまです。

本作には前シリーズ「空の軌跡」からエステル・ヨシュアをはじめとして色々なキャラが再登場を果たしています。 普通であれば新章であり、新主人公が存在する本作では引き立て役に徹するなどして、ファンサービスをこなしつつ少し関わる程度に終始するものだと(私は)思いますが、本作に関してはそんな謙虚さはなく、様々な場面で主人公らを完全に食ってしまっています。

本作の核心に触れる場面ですら前作キャラが大きく関わってきますし、作中でも「特務支援課は遊撃士協会の噛ませ犬」という表現があったかと思いますが、結局はそれが言い得ていたと言えます。 彼らなりには頑張っているし曰く成長しているらしいのですが、例のエステル・ヨシュアの二人のゴリ押しなどもあった結果、主人公が誰なのかブレブレになってしまっていますね。

ある場面でのある人のセリフで「でしゃばってごめん」というのがあるんですが、この時ほど作中のキャラのセリフに強い共感を覚えたことはないでしょう。

過去キャラにも花を持たせ、メーカーとしても愛着があるのは理解しています。 しかし、新章への橋渡し的な作品である本作で、ここまで前作キャラを引きずりすぎているのはマイナスです。 これくらいなら、潔く空の軌跡シリーズとして続投させたほうが幾分マシだったかもしれません。

上ではJRPG入門にいいと書きましたが、本作を本気で楽しむというレベルにまで持って行くとなると空の軌跡からのプレイは必須ですし、本作では未解決部分が多いのでなんとなくスッキリしない(PSPでは続編が出ていますし、もろにto be continuedって書いてます)ので、作品としてはあまりにも中途半端ではあります。

もう少しなんとかしてほしかったところ

移植にあたってゲームバランスなどの微調整まで求めるのはわがままなのかもしれませんが……リマスターするだけではないのですから、それくらいしてくれても!とは思ってしまうわけで。

例えばゲームバランス。

雑魚とボスの温度差に開きがありすぎる気はするものの、それ以前に、ボスの強さが画一的で面白みに欠けます。 とりあえず耐性つけまくって、とりあえず攻撃力・防御力・HPを高くして。 フィジカルな強さ“でしか”強さを表現できていないボスばかりで、序盤からうんざりしてきます。

無駄にタフで攻撃は痛い。 しかも単調とくれば、ボス戦がありそうな空気になってくると「またか……」と強敵と戦う前の緊張や期待・高揚よりも、面倒くさいという気持ちのほうが強かったです。

幸いサブクエストで出てくる魔獣の類は状態異常なども駆使してきて、多少は対策などが楽しめるものもありましたが、それも数は少なかったですし、むしろ発生タイミング的に「これはどうなの?」というものもあったりなかったり。 序盤の雑魚でも唐突に即死攻撃してきたりとか、スリルや歯ごたえじゃなくてただのバランス崩壊じゃないか、と。

敵AIも調整が甘いのか、もう、状態異常攻撃を連続で食らって永遠ハメ食らった時もげんなりしましたね。 状態異常は重ねがけできるというのが仇となって、延々と気絶させられ続けたりとした場面もありました。 対策を怠ったせいと言われればそれまでですが、納得は行きません。

当然このバランスですとこちらが状態異常を起こせる相手に関してはヌルゲーであったりと、全体的に大味なバランスと言わざるを得ません。 高難易度に関してはやる気が起きなかったので未プレイですが、はたしてやりごたえがあるものなのか、単に理不尽で面倒くさいだけなのかは推して知るべし。

戦闘バランスとして併せてダメだと感じたのはシンボルエンカウントシステム。

本作ではパーティキャラクターがぞろぞろとついてくるんですが、彼らにも当たり判定があるので、敵から逃げる時にはうまく「巻く」必要があります。 ここでいう「巻く」とは追手を振り切る意味での「巻く」ではなく、縦にのびた隊列を文字通り「巻き取る」の意味であり、その場でグルグルと回転してパーティを集合させるなどというアホらしい戦術が必要となります。

彼らは思考・行動なんてしませんから、敵が猛追してこようとものんきにパーティトップについてくるだけです。 そしてあろうことか敵シンボルに接触し、しかも敵の先制を許すというまさに足手まといとなっています。

そこも制御してこそのシンボルエンカウントという意見もあろうものでしょうが、視認可能な領域の狭さなども相まって、どちらかといえば面白さよりもストレスフルな仕様になってしまっているように思います。

せっかくフィールドアタック→先制攻撃というような戦略性も組み込んだのですから、同系システムの成功例である「ペルソナ3」「ペルソナ4」あたりを見習って欲しかったところですね。

あとは見栄えの悪さも気になりますね。 単純に、テクスチャやフォントが汚いです。

PS Vitaだとこのフォントはガタガタして見苦しい。 手前の看板も字が判読できないレベルです。

テクスチャは元データをなくしてしまったのかと思わんばかりのボケボケっぷりで、リマスターの醍醐味である高精細化が全くなされていません。 まさか、PS Vitaのタイトルで看板の文字が判読しにくい(できない)タイトルが出るとは思いませんでした。

フォントも妙なガタガタがあって美しくなく、むしろPSP版のほうが可読性も高かった(スクリーンショットで確認)という謎。 なんだこりゃ。

PS Vitaのディスプレイで見ると、背景・遠景などが本当に悲惨です……。

総括

だいぶ苦言だけで長くなって参りましたのでここらで総括としますが、本当はまだまだ言いたいことがあります。

しかし、幸い(?)本作は空の軌跡をプレイした人にはあまりウケが良くなかった作品らしく、シナリオに関しては空の軌跡の方が優れているという意見を耳目にしています。 空の軌跡もプレイしようかと思っているので、若干救われました。 戦闘システムなどは本作のほうがよさそうではありますが。

まぁそんなわけで、話の繋がり的にも本作から入った人でもひと通りは楽しめるものの、クライマックスでの感動などは空の軌跡からプレイしていないと魅力半減ということになりかねず、作品単体で見ても非常に中途半端なものになっています。

とはいえ、これら苦言は老舗メーカーの人気シリーズということを考えてのもの。 それだけの数の作品を作っておきながらこんなものなのか!という勝手な憤りも含まれている点は否定しません。 客観的に作品単体で見れば、及第点以上のまぁまぁ良作といったところではないでしょうか。

ということで可もなく不可もなく、オススメすることはないけれども全力で購入を止めるほどでもない作品です。 ただし、初期バージョンには致命的なバグが残っていますので、アップデートは必須です。 そこだけはご注意を。

英雄伝説 零の軌跡 Evolution

書いた人はこんな人

壬生狼
壬生狼(みぶろ)と申します。 miburo666/ルプス(Lupus)は概ね同一人物。 ゲーム、音楽、映画/アニメ、イラストなどが趣味。 ここでは音楽や映画/アニメを中心に、趣味関連の記事を書いていきます。
記載されている会社名・製品名・システム名などは、各社の商標、または登録商標です。
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『「英雄伝説 零の軌跡 Evolution」 レビュー』へのコメント

  1. 名前:まるお 投稿日:2013/05/27(月) 15:44:33 ID:ce7a07a91

    これまでのレビューで一番笑ったかもしれんw

    軌跡シリーズはたぶん、当時のVITAの数少ないソフト群として発売され、本ソフトの前に発売されたイースも高評価だったので、その辺くらいからファルコム自体が少し注目されるきっかけになったのかもしれませんなぁ。
    かくいう私もその一人でね。
    尤も、このソフトに関しては記事のとおりチュートリアルの段階で病的に鳥肌が止まらなかったので、すぐやめましたが(笑)

    捻くれてしまった我らにはもはや、仲良しこよしは肌に合いませんなぁ・・・
    これなら露骨でもいいからテイルズのアビス程度にはいがみあってほしかった。
    (アビスも後半はただの仲良しこよしゲーでしたが)

    ていうか金魚のフンにも当たり判定あるのかwww
    それってシンボルエンカウントの利点の一部を失ってますよなぁ。
    普通のランダムエンカウントにすればまだ救いようもあったものを。
    まぁ、この感じだとランダムでも理不尽なエンカウント頻度で文句をいうことになったでしょうけどw

    一部テクスチャ・フォントあたりも微妙だったようで(私自身もはや忘れた)進化どころか退化じゃないですか!
    ということで、本作は「英雄伝説 零の軌跡 Devolution」 でいいですな(´・ω・`)

    • 名前:壬生狼 投稿日:2013/05/27(月) 16:25:03 ID:4c171381f

      どもどもです! どうやら楽しんでもらえたようでなによりwww

      それ以前からも地道に?口コミなどで名前はそれなりに知れ渡っていた気もするけど、確かにイース(セルセタ)とかあの辺りから各種メディアで取り上げられるようになりましたなぁ。
      私もPS Vitaで出すということで飛びついてみましたが、今にして思えば、何故に人気を博した空の軌跡から売りに出さなかったのだろう、と思いますね。
      Evolution商法でまたかなり売れたんじゃないかなと思いますが~。

      >捻くれてしまった我らにはもはや、仲良しこよしは肌に合いませんなぁ・・・
      んですなぁ……どんな仲間(親友)でも喧嘩とか意見の食い違いは起きうるわけで、まして、面識のない4人がすぐに意気投合ってのはなんか……ね。
      作中で「ロイドは捜査官としてはお人好し過ぎる!人を疑うことも必要だ」とか仲間だかが言っていましたが、それは君たちもそうじゃないのかい?と思いましたわ!
      別にずっとギスギスしてろってわけではなくて、エピソードに深みを持たせる意味でも、信頼を築き上げていく過程は欲しかったなぁ。

      >ていうか金魚のフンにも当たり判定あるのかwww
      残念ながら、あります! パーティトップの動きを正確にトレースしてついてきてくれるので、思わぬ敵の奇襲を許したこと、枚挙に暇無し!!
      敵は群れていても単独でしか表示されないのに、こっちは大名行列ですわ(‘A`)

      テクスチャは、PSPで使ったものをそのまま拡大しただけとかそういうノリなんじゃないかと……紹介動画で「PS Vita向けに最適化!」とか宣っていますが、全くもって最適化されておりませんわ。
      まぁ、それによって困りはしませんが、見栄えは良くないですねぇ。

      >英雄伝説 零の軌跡 Devolution
      なんかもう、そっちのほうがいい気がして来ました。 語呂もカッコイイしww

      ではまた!